コアセラピーセミナー2009
「PTS: Pelvis-Thorax Stabilization」要綱
(1)セミナーの目的
「コアスタビライゼーション」は,「体幹部の筋活動パターンを変化させることにより,コアの動的安定性を高める」という意味で用いられています.その目的は腰痛対策(文献1),スポーツパフォーマンス,排泄機能(失禁対策),転倒予防など多岐に渡り,多種多様な方法が提唱されてきました.このPTSセミナーでは,氾濫する情報を整理し,骨盤と胸郭のスタビライゼーションをシステマティックに進めることにより,応用範囲が広く,また確実に効果が得られるスタビライゼーションの進め方(PTSプログラム)を紹介します.
PTSプログラムの基本的な構造は以下の表に集約されます.
表:骨盤・胸郭スタビライゼーション(PTS)
1. ローカルスタビライゼーション
①骨盤スタビライゼーション:腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群
②胸郭スタビライゼーション:胸部脊柱起立筋・菱形筋
2. スタティックスタビライゼーション
①腹筋群活動パターン
②姿勢改善と安定
3. ダイナミックスタビライゼーション
①歩行動作
②ランニング動作
③スポーツ動作
PTSプログラムはPTRプログラム(文献2)によって背臥位でのリアライメントが得られた状態において,リアライメントの効果を持続させるための筋活動パターンの再構築を図ることを目的として実施されます.第1 段階「ローカルスタビライゼーション」では骨盤と胸郭それぞれのユニット内におけるスタビライゼーションを図ります.第2 段階「スタティックスタビライゼーション」では,胸郭と骨盤を連結する腹筋群と背筋群の筋活動パターンを再構築し,立位姿勢を含む骨盤と胸郭の位置関係の改善と安定化を図ります.そして,第3 段階「ダイナミックスタビライゼーション」で運動連鎖を考慮し,スポーツ動作や様々な身体活動に応用できるダイナミックスタビライゼーションの獲得を目的とします.
このセミナーの内容は下記の文献の内容に準じています.参加申し込みをされた方には,開催日の1週間前に下記の文献を送付させていただきます.
1.蒲田和芳, 杉野伸治, 山本大造, 山内弘喜. (2009). "骨盤・胸郭のリアライメントによる腰痛・骨盤痛の治療." 理療 39(1): 21-34.
2.蒲田和芳, 杉野伸治, 山内弘喜. (2008). "骨盤・胸郭リアライメント法(PTRプログラム). " 理療 38(4): 62-76.
このセミナーでは,コアコンディショニングやコアセラピーの基本についての講義は行いません.初めてコアセラピーセミナーにご参加される方は,事前に「コアコンディショニングとコアセラピー」(講談社)の第3章と第5章をお読みください.
(2)対象
理学療法士,柔道整復師,鍼灸師,アスレティックトレーナーなど
(3)到達目標
l 骨盤と胸郭のスタビライゼーションに関わる臨床運動学を理解する.
l 骨盤および胸郭内のスタビライゼーション機構を理解する.
l 骨盤と胸郭を連結するインナーユニットの構造と役割を理解する.
l ダイナミックスタビライゼーションの習得過程を理解する.
l 以上について,実技により自身のコアスタビライゼーションを実感する.
(4)プログラム
時間割 タイトル(講師)
14:00-14:50 講義1:骨盤・胸郭の運動学とバイオメカニクス
(山本 大造)
15:00-15:50 講義2:ローカルスタビライゼーション
(蒲田 和芳)
16:00-16:50 講義3:スタティックスタビライゼーション
(蒲田 和芳)
18:00-18:50 講義4:ダイナミックスタビライゼーション
(蒲田 和芳)
19:00-19:50 実技1:ローカル/スタティックスタビライゼーション
(山本 大造)
20:00-20:50 実技2:スポーツ動作を念頭においたダイナミック
スタビライゼーション
(蒲田 和芳)
(5)講義内容
■講義1 骨盤・胸郭の運動学とバイオメカニクス
【講師】
ゴルフレスキュー 山本大造
【内容】
PTSプログラムにおいてトレーニングの対象となる体幹・骨盤周囲筋の構造と機能について整理します.特に骨盤の安定化に関与する骨盤底筋群,胸郭の安定化に関与する胸椎後方筋群,そして胸郭と骨盤とを連結する外腹斜筋群と背筋群について詳述します.
■講義2 ローカルスタビライゼーション
【講師】
広島国際大学 蒲田和芳
【内容】
PTRプログラムにより歪みの改善が得られた骨盤を安定化させる骨盤内安定化機構,そして可動性とアライメントが改善した胸郭内の安定化機構について,解説します.骨盤内安定化機構としては腹横筋の助けを借りつつ,骨盤底筋群が重要な役割を果たします.触診や意識化が容易ではない骨盤底筋群の効率的な再学習方法の過程を整理します.一方,胸郭については,呼吸や脊椎運動を妨げずに胸郭を望ましい肢位にて安定化させるための筋活動パターンについて解説します.
■講義3 スタティックスタビライゼーション
【講師】
広島国際大学 蒲田和芳
【内容】
骨盤内安定化および胸郭内安定化が得られた状態において,胸郭と骨盤を連動させつつ安定化する腹筋群と背筋群の安定化プログラムの考え方と進め方について解説します.この際,腹横筋の単独収縮の学習を最優先とし,腹横筋のコントロール能力が改善した後に,腹横筋と内・外腹斜筋や腹直筋との協調パターンを再構築します.また上部腹筋群の過緊張が胸郭運動を制限し,それが腰痛の原因となるメカニズムを破壊し,望ましい筋活動パターンを再構築する方法についても解説します.
■講義4 ダイナミックスタビライゼーション
【講師】
広島国際大学 蒲田和芳
【内容】
ローカルスタビライゼーション,スタティックスタビライゼーションの過程が終了し,さらにダイナミックな体幹運動を安全に行うことができるようなコーディネートされた体幹の安定化を図ります.スポーツ動作として,回旋運動を主体とするゴルフや野球のスィング動作,リフティング動作,前屈や後屈を主体とする運動パターンなどについて,理想的な筋活動パターンの学習過程について解説します.
■実技1 ローカル・スタティックスタビライゼーション
【講師】
ゴルフレスキュー 山本大造
【内容】
講義2と3の内容についての実技を行います.床上の背臥位から徐々に重心を上げて立位の安定性を高める過程を実際に体験していただき,ご自身のコアに生じる変化を体感していただきます.
■実技2スポーツ動作を念頭に置いたダイナミックスタビライゼーション
【講師】
広島国際大学 蒲田和芳
【内容】
講義4の内容を実技を通じて学習していただきます.特にスポーツ場面を想定した学習過程を重視し,どのレベルの選手においても安全に実施できるプログラムを紹介します.汗をかく運動を行いますので,タオルや着替えなどのご用意をお願いいたします.